leopardgeckoのブログ

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日本語版ローグ(Rogue 5.4)for macOS よもやま話。<コンセプト>

前回の記事で公開したMac用日本語版ローグ(Rogue)についての雑談です。

 

私がRogueに触れるきっかけになったのは、後藤寿庵さんがMac用に移植されたデータ分離版Rogueでした。Rogueの存在自体は昔から知っていましたが、実際にプレイするのはそれが初めてだったのです。これには随分はまりまして、ついにはイェンダーの魔除けを手にして洞窟から生還することができました。ところが残念ながらこのアプリは今のMacでは起動することができません。前に書いた記事のように手間をかければ他のデータ分離版Rogueで遊ぶことはできますが、これではハードルが高すぎて普通の人はなかなか手が出せないでしょう。手軽に日本語版Rogueで遊ぶにはどうすれば良いかと考えた末に、自分で作ることにしました。

コンセプトは、「Macで手軽に遊べる親しみやすいRogue」です。

しかし一言にRogueといっても現在公開されているものには様々なバージョンがあり、どれを選ぶのかで少々悩みました。Rogueには二つの大まかな系列があり、一つはオリジナルのRogue、もう一つはデータ分離版の元になったクローンの系列です。

クローンの系列にはデータ分離版などの親しみやすい日本語版があり、操作感が軽快でとっつきやすいのもポイントです。最初のうちはおっかなびっくり一コマずつ移動していても慣れてくると通路などはバーっと走りたくなります。Rogueにはちゃんと走るためのコマンドがあって、データ分離版では曲がり角でも止まらず一気に駆け抜けてくれます。カラーの配色は見やすく雰囲気も出ていて良い感じです。

一方、オリジナルのRogueはデフォルトの設定では走る時に曲がり角で止まってしまう、カラー対応していない、scroll(巻き物)やpotion(水薬)を使った後にいちいち呼び名をつける必要がある、などなど面倒くさいところがあるのですが、オリジナルならではの魅力として「暗い部屋」があります。データ分離版ではどの部屋でも入った途端に隅から隅まで見渡すことができるのですが、オリジナルでは暗い部屋は自分の周りしか見えません。これがスリルがあって良いのですね。魔法の灯りの杖を振るとパッと明るくなるというカタルシスのようなものも味わえます。

怪物の強さにも少々違いがあって、データ分離版ではケンタウロスが出てくるあたりから突然に難しくなるのですが、オリジナルではそこまで急激な変化はないので中盤からやたらと死にまくるというような展開はありません。

 

考えた結果、オプション設定などを駆使してデータ分離版っぽいオリジナルにすれば一番面白いRogueになるのではないかとの結論を出しました。見た目や操作感をなるべくデータ分離版に似せて、中身はオリジナルの最終版であるRogue 5.4という形です。

ソースを改変してデータ分離版のように使ったアイテムを自動判別するオプションも追加してみたのですが、これはさすがに逸脱しすぎかなと思って最終的にはボツにしています。外観以外の機能的には後述する5.4pから移植したもの以外の独自要素は加えないことにしました。やりすぎるとRogue 5.4ではなくなってしまいますので・・・。

 

Y.Oz Voxさんがカラー化したRogue 5.4pというものを作っておられますので、最初はそれの日本語化を試みました。いったん完成はしたものの、5.4pはもともとWindowsLinux用として作られており、Macコンパイルするとセーブしたゲームを再開した時に異常終了してしまうという致命的な不具合がありました。これを最後まで直すことができなかったので公開は断念しました。

別のところで入手したRogue 5.4.4のソースをコンパイルしてみたところ上記の不具合は出ませんでしたので、一からやり直してこれをベースにして日本語化した上で、5.4pのカラー化や識別の巻き物を一種類にする設定などの独自仕様を移植してみました。これが案外うまくいったので最終的な採用版になりました。バージョン名は一応5.4.5Jとしましたが、実際には5.4.4と5.4.5(5.4p)のハイブリッドで中間的なものです。

ちなみに作業の途中でバージョン3.6や5.2にも手を出してみたのですが、これらは色々な理由でうまくいかず断念しました。

 

日本語訳に関してはデータ分離版のもの(おそらくローグ・クローン2日本語版を作った太田純さんによる訳)が個人的にかなり好きなので、あえて独自の和訳はせずにほぼそのまま使わせていただきました。この和訳があるからこそデータ分離版には独特の親しみやすさがあるのだろうと思います。

カラーの配色もどうするべきか悩みました。5.4pはIBM-PCやPC 9801/8801を参考にしているそうですが、個人的にはデータ分離版の配色の方が好みです。また、ゲーム中のメッセージを見ると部屋の明かりは青とされているようですので、データ分離型の床が青いのはRogueの世界観にも合致します。デフォルトの配色はデータ分離型に準ずるものとして、PC-9801/8801の配色のオプション(brightモード)だけ残すことにしました。

 

また、親しみやすさの一環として、ターミナル用の実行バイナリだけでなくMac用のアプリとしてGUIで起動できる環境も用意したいと考えました。とはいっても私はド素人ですから難しいことはできません。Applescriptを使ってスタンドアロンのアプリっぽいものをでっち上げてみました。ただ起動するだけのアプリではなく、オプションを選べるようにしてみました。Rogueはオプションを駆使すると結構色々な設定ができるのですが、それをGUIから手軽に体験できるようになったと思います。

 

CUI版も併せて公開しましたが、独自仕様で起動するGUI版とは違って元のRogue 5.4のデフォルト設定のままで起動します。CUI版を使う人ならば環境変数などでご自身でお好きな設定にすることができるでしょうから、あえてシンプルにオリジナルのままです。

 

今の時代にコンピューター黎明期のゲームであるRogueがどれほど需要があるものかわかりませんが、単に歴史的な意義のあるRPGというだけでなく気軽に遊べるゲームとして今でも十分に楽しめるものだろうと思います。