日本語版ローグ(Rogue 5.4)for macOS よもやま話 その2。<細部のこだわり>
前の記事で公開したMac用日本語版ローグ(Rogue)についての雑談です。
当初はこのブログから直接ファイルにリンクしていましたが、ブログでアプリを配布するのも如何なものかという気もしますので、ファイル配布用のサイトを作ってみました。
もしダウンロードした方がいらっしゃいましたら、感想でもご要望でもお叱りでもなんでも良いのでなんらかのリアクションをいただければ嬉しいです。
以下はよもやま話です。
この日本語化の作業で初めてRogueのソースコードをじっくり見たのですが、30年も前の古いゲームなのに細かいこだわりがあちこちに見られて驚きました。
例えば指輪や杖の材質、水薬などの色の設定がやたらとたくさんあるのです。それぞれ20〜30種類くらいの設定があり、杖(staff)の材質は木材で魔法の棒(wand)は金属という決まりもあります。しかもこれらの設定はゲームの展開には一切影響を及ぼさないのです。
RPGやファンタジーに詳しい人ならば常識なのかもしれませんが、「staff」と「wand」の使い分けにも面食らいました。Rogueでは魔法が使える「stick」がstaffとwandの2種類に分類されています。イメージとしてはstaffがロード・オブ・ザ・リングでガンダルフが持っているような大きな杖で、wandがハリー・ポッターが持っているような小さめの棒といったところなのでしょうか。データ分離版ではstaffもwandも「つえ」としてまとめているようですが、今回の日本語版では「つえ」「魔法の棒」と分けてみました。どちらも魔法のstickとしては同じ機能ですが、staffは武器としても使えるという違いがあります。
魔法の巻き物の設定も異様に凝っていて、名前は150種類くらいの音節が設定されていてそこからランダムに作られています。おそらく全く同じ名前の巻き物が出てくることは二度とないでしょう。
これらを全て日本語に置き換えるのは結構大変な作業でしたが、そもそもこんな設定を作ること自体が大変なことだったでしょう。何せ、木材だけでも30種類以上の設定があるのです。これはおそらく何度プレイしても以前に見たような展開にならないようにする工夫の一つだったのだろうと思います。
表示の設定も細かくできています。簡潔な表示に設定するとメッセージが微妙に違ってくるのですが、ここまでの微妙な違いをこれほどたくさん用意する必要があったのかと思います。通信速度が遅かった時代には実際に意味があった設定なのかもしれませんが・・・
データ分離版では主語があまり使われていません。これはおそらくデータ分離版の元になったClone IIがオリジナルの簡潔表示を元にしたメッセージを使っていたために、簡略表現としてそのような形をとっていたのでしょう。オリジナル版のデフォルトは簡潔表示ではないので、データ分離版に比べると全体的にやや長めのメッセージになっています。オプションから簡潔表示をオンにするとデータ分離版っぽいメッセージになります。
幻覚を見ているときにはメッセージが微妙に変わるという設定もあちこちに散りばめられています。例えば武器に魔法をかける巻き物を読んだ時は武器が銀色に光るのですが、幻覚を見ている時にはその色がランダムに変更されます。空腹になった時や食料を食べた時のメッセージも違います。そのような仕掛けがあちこちにあるのです。これもゲームの展開には全く関係がない設定ですが、限られた表現の中でどうやって多様性を出すかと考えた結果でしょう。
データ分離版にも同じような演出はありますがここまでは細かくないので、オリジナル版ならではの楽しみの一つと言えるでしょう。
また、おそらく動作確認用として、ほとんどあらゆることができるようになるwizardモードという隠し機能があるのですが、一般プレーヤーが使うことはないと思いますがこれも凝った設定になっています。wizardモードで迷宮をウロウロするだけでも結構楽しめます。ほぼ無敵になってしまうためスリルはありませんが。(申し訳ありませんが、公開版ではwizardモードは使えない設定になっています)
見た目はシンプルでも意外と奥が深いというのはRougeの魅力の一つだろうと思います。冒険と戦いのスリルを味わうだけではなく、幻覚の水薬をあえて飲んでメッセージの変化を楽しんだり、「今度出てくる杖の材質は何かな」というような視点を持ってみても面白いのではないでしょうか。